答えから書きます。風邪ばかりではありません。
小児科を受診される患者さんの多くは呼吸器疾患です。大まかですが70-80%を占めると思われます。当然ですが、症状としては咳、鼻水が出る。喉が痛い(咽頭痛)、これに熱が伴うこともあります。時に咳で吐く、咳で夜寝られない。苦し時は食欲が低下し、胸がゼーゼー、ヒューヒューします。
風邪は、医学用語では上気道炎と言います。呼吸器管は気管支以下、肺を含めて下気道と呼び、気管支より上部の鼻腔、咽頭部、喉頭部を上気道と呼びます。鼻水の出る鼻炎、熱を伴い、咽頭痛のある咽頭炎、口蓋扁桃の炎症を伴う扁桃炎、声がれ(嗄声、させい)、と犬の吠える様な咳(犬吠様)を伴う喉頭炎を風邪と言います。原因の多くはウイルス感染症です。たまに細菌感染症もあり抗生剤が必要となることもあります。これは血液検査で判断します。
一方、風邪ではない咳は、多くは鼻水から始まり、その後咳が始まります。この咳は痰が伴い、ときに呼吸困難があります。風邪の咳と違って熱は出ないのですが、いくつかの特徴があります。5つぐらいの特徴を1つ1つ書いてみます。
- 最も大きな特徴は、すでに書きましたが、咳に痰が絡むことです。痰は鼻腔や喉にあるのではなく、気管支からの分泌物で、気管支の中にあります。吸い込んだ空気の流れを妨げ、時に呼吸困難を伴います。
- このタイプの咳は長い特徴があります。風邪の咳は多くは1週間で治まりますが、2-3週間続き、子どもによっては1年中、多かれ少なかれ咳が出ています。走ったり、大騒ぎすると咳が出るなどは、気管支の過敏性を示しています。
- 咳は夜間に多い傾向があります。布団に入ると咳が始まる。お昼寝をするときも咳が出ます。睡眠が咳で妨げられます。夜間に咳が多くなる原因ははっきりしませんが、
気管支喘息もこのような傾向があります。
- 咳に季節性があります。子供により異なりますが、咳の多い季節があり、逆に咳の少ない季節もあります。多くの子は気温差の大きい、秋、春の季節の変わり目に咳が多くなる傾向があります。比較的夏の暑い季節は咳が少ないことが多いです。
- 遺伝傾向はあります。両親の気管支が弱かったり、両親の兄弟姉妹に咳の多い方が見えたり、気管支喘息の既往があったりします。1世代飛んで、祖父母に咳の多い方が見えることもあり、いとこの時もあります。
これらの特徴を持った咳は、気管支喘息と同じ機序(メカニズム)で起こる咳と思われます。重症型を喘息と診断し喘息の治療を、軽症の方は去痰剤と気管支拡張剤、吸入にて治療します。小児期の気管支喘息は、その70%が小児期に軽快します。また気管支が過敏な子も年齢とともに強くなり、過敏性は治まります。このように自分の力で成長とともに症状を改善する能力が小児の大きな特徴といえます。