薬の抗生物質(抗生剤)は患者さんの中で、“いい薬”の感覚が根強くあります。
時に抗生剤を希望せれるお父さん、お母さんが見えます。
しかし、このように抗生剤を希望される患者さんは減少していると思います。多くの薬は良い面と副作用の面があります。最近は抗生剤の使い過ぎを考えなおそうとの動きが起こっています。
私もいいことだと感じています。今回は毎日新聞の社説に掲載された1文をそのまま載せました。読んでみてください。
“抗生剤のリスク”
“安易な使用は見直したい” 毎日新聞(1月26日)の社説
抗生剤(抗菌薬)が効かない“薬剤耐性菌”による死亡者が、全国で少なくとも年間8000人以上いるとの推計結果が出されました。
国立国際医療研究センター病院(東京)などの研究チームが昨年12月、代表的な2種類の耐性菌について2017年の国内死者数を推計した。
全国規模で初のデータだ。抗生剤を飲むと、耐性がない菌が死滅する一方で、1部の耐性を持つ菌が生き残り増殖する。
院内感染が問題になったが、最近では日常生活における感染も増えている。肝心なのは、抗生剤の安易な使用をやめることだ。
特に、風邪の原因のほとんどは抗生剤が効かないウイルスであるのに、処方されるケースが少ないくない。関係学会などが診療所を対象にした調査では、風邪の診断で患者が抗生剤を希望した場合、“説得しても納得しなければ処方する”と半数が回答した。“患者の希望通り処方する”も1割強いた。
成人を対象とした内閣府の19年度調査では、抗生剤が“風邪やインフルエンザの原因となるウイルスには効かない”と正しく答えたのは4割弱にとどまる。
一方、細菌感染で抗生剤が処方された場合は、きちんと飲み切らなければならない。細菌が死滅せず、体制を獲得しやすくなるからだ。
日本では子供への処方が多いことも問題だ。厚生労働省は昨年末、医療機関向けの適正使用の手引きを改定し、乳幼児への対応を追加した。
その中で、風邪や急性副鼻腔炎では、抗生剤を投与しないことを推奨している。細菌感染を合併しないために抗生剤を予防目的で投与することも、やめるよう促している。風邪は本来、きちんと休むことで自然に治るものだ。
ただ悪化した場合は、再度の受診が必要で、こうした点を含めて、医師が患者に十分説明することが大切だ。
政府は20年までに抗生剤の使用量を、13年の水準の3分の2にする目標を掲げている。
18年の実績は1割減にとどまる。医師には節度ある処方が求められるが、患者に正確な知識を広げる努力も欠かせない。