今年5月頃からマイコプラズマ感染症の流行が始まり、徐々に感染者数が増加し現在(12月第1週)、定点あたり5人前後です。オリンピックの年に流行すると言われていましたが、今年もパリオリンピックがありました。前回は2016年の8年前、今年の半分程度の流行がありましたがやはりリオデジャネイロオリンピックの年でした。
マイコプラズマ感染症は、呼吸器(鼻腔、咽頭、喉頭、気管支、肺など)感染症で、熱発、咳、鼻水、咽頭痛があり、呼吸器系の風邪と同様の症状です。そのため、問診や症状、診察では区別が困難です。
年長児で、4日以上熱が下がらない、あるいは微熱が続く、咳が長いなどの訴えがあると、初めてマイコプラズマ感染症を考えます。咽頭ぬぐいで検体をとり、迅速キット(5-10分で結果が出ます)でマイコプラズマがいるのかの検査をして、レントゲンで肺炎があるか見ます。マイコプラズマ抗原の迅速キットで陽性の時、マイコプラズマ感染症と診断し、レントゲンに肺炎があれば、マイコプラズマ肺炎と診断します。
今年10月から12月はじめにかけて、本院で経験したマイコプラズマ肺炎の症例を2例供覧します。
第1例
4歳9ヶ月の女児。11月23日38.6度の熱がでて、24日(翌日)熱は39度。咳が出て、胸がゼロゼロするとの訴えがありました。25日(発熱して2日目)、本院を受診され、咳の薬を処方しました。29日(発熱して7日目)、熱が長いのでマイコプラズマ抗原と胸部X線の検査をして、マイコプラズマ肺炎と診断しました。抗生剤の服用を開始し、12月2日(発症10日目)再々診時、解熱していました。
熱は約1週間近く続き経過は長かったのですが、第1選択の抗生剤で反応は良好でした。
第2例
11歳8ヶ月女児。11月22日37.8度、23日(翌日)37.2度。その後37度台の熱が続き、26日(発熱4日目)37.5度、熱が下がりきらないため本院受診しました。マイコプラズマ抗原定性(+)。胸部X線にて左下肺野に陰影あり、マイコプラズマ肺炎と診断しました。第1選択の抗生剤を処方し、3日後の29日(発熱して7日目)再診となりましたが、熱は37.7度で続き、咳も改善が見られませんでした。さらに同じ抗生剤で経過観察しましたが12月2日(発熱して10日目)熱は38度台へ上昇し、胸部X線も変化は見られず、家族の希望あり市民病院へ紹介しました。マクロライド耐性マイコプラズマ肺炎と診断され別の抗生剤に変更されました。
今年のマイコプラズマ感染症の流行の中で、第1選択の抗生剤で効果が見られなかった症例が2例ありました。しかし、次に選択された抗生剤は2例とも効果が見られました。
上記2例のまとめとして、長引く咳と下がりきらない熱は(たとえ37度台の熱でも)マイコプラズマ肺炎などマイコプラズマ感染症を考える必要があることを示しています。
今回はマイコプラズマ肺炎を中心に書きましたが、マイコプラズマ抗原の検査は陽性でも肺炎のない症例、逆に肺炎があってもマイコプラズマ抗原の検査が陰性の例もあります。
マイコプラズマ感染症に効果があると言われている抗生剤も解熱にはかなり効果的と思われますが、咳は熱が下がってもしつこく続く印象があります。