成長曲線からわかる疾患(第2報)
前回は男児の成長曲線が0歳から18歳までどのような変化をたどるのかを書きました。今回は成長曲線からどのような病気が予想できるか?2-3の例を紹介します。図を参照してください。水色の①は6-7歳まで平均以上で身長が伸びていましたが、急に伸びが鈍って横ばいに近い状態になっています。曲線が平均ライン、さらに下のー1SDのラインを下方へ横切っています。
個人の身長を成長曲線上にプロットすると、多くの場合成長曲線を横切ることはありません。
① のような場合は甲状腺機能低下症、大量のステロイド療法を行っている、虐待などで精神的はダメージを受けている、などが考えられます。
黄色の②は、もともと低身長です。1-2歳から身長曲線はー2SD以下です。しかもその程度は徐々に差が大きくなっています。早めの精査が必要と思わる症例です。
オレンジ色の③は6歳ごろから身長が急増しています。脳腫瘍なども考えられますが、思春期早発症の可能性があると思われます。
思春期早発症は男児では男性ホルモンが、女児では女性ホルモンが正常より早期に分泌開始され、それぞれの性早熟が正常より早く完了します。身長が伸びる期間が短くなり、期待された身長より小さくなります。
最近クリニックで“思春期早発”が問題になった2例を紹介します。1人は成長ホルモン治療を継続していた患者さんです。年齢とともに性早熟、骨年齢が進み、成長ホルモン治療の期間が圧迫されたとき、性早熟を抑制する薬を使ってもらえないかとの希望でした。性早熟を抑制して、成長ホルモンの治療期間を長くしたいとの考えです。理にはかなっているのですが、やや無理がある判断か?と感じました。熱心なお母さんで高次医療センターに相談され、1時期性抑制療法をされましたが、短期間で中止されました。
もう1つの例は、11,2歳の子ですが、成長曲線から見ると+1SDと+2SDの間にあり、その年齢としては十分な身長でした。しかし、外陰部の変化、体型が年齢より早いのではと両親が心配され受診されました。思春期の治療には診断基準があり、その基準からは治療の対象になりませんでした。どうしても治療が希望なら大きな病院で相談するのも1つの方法ですとお話ししました。
学校で作られている成長曲線を見せていただいているのですが、今まで思っていたより“思春期早発“は、病気の範囲に入らないものも入れると、かなり多いと感じています。