鼻水は鼻の鼻粘膜(鼻腔)からの分泌物で、風邪で鼻の炎症がおこったり、アレルギー性鼻炎などで大量に分泌され、1部は、鼻孔から垂れて出てきますが、その他の鼻水は喉(咽頭部、喉頭部)を通過して食道から胃に流れこみます。夜間、寝ているときも鼻水は分泌され、多くは飲み込んでいます。
一方、痰は気管支からの分泌物です。ウイルスで気管支炎を起こした時、気管支の過敏性のある人(喘息傾向のある人)が、気温の変化(急に気温が下がる)などに反応して、気管支から分泌されます。痰が気管支内に分泌されると、空気の通り道が狭くなり、呼吸音がゼーゼー、ヒューヒューし、呼吸が苦しくなることがあります。咳の役割はこの痰を気管支から追い出し、空気を通りやすくすることです。咳は大切な仕事をしています。
このように鼻と痰は全く別ものです。
鼻水と咳で受診された患者さんが、“鼻がのどに降りて、痰が絡む咳が出ます”といわれます。しかし、鼻水が咳の原因になることはほとんどありません。教科書的には後鼻漏(副鼻腔炎からの粘調な鼻汁)が咽頭に下がって、咳の原因になると記載がありますが、小児ではまれです。
気管支の過敏な患者さんは鼻水から始まり、咳に移行することが多いため、咳の原因が鼻水と考えているお母さん方が多いのは理解できます。しかし、ゼロゼロした咳の原因は気管支から分泌された痰が1つの原因で鼻水ではありません。もう1つは気管支が収縮(細くなる)し空気の流れを悪くしていることです。
鼻が出て、後に咳が出る。この時間的な経過から、痰が伴う咳の原因が鼻水になっています。鼻の吸引や鼻の治療のため、耳鼻科を受診されることがしばしば見られますが、咳が出始めたときは、小児科を受診されることをお勧めします。
痰の事を書きましたので、ついでにもう1つ付け加えます。咳で来院された患者さんに痰が絡む咳ですか?と聞くと多くの患者さんは答えに詰まります。医療関係者以外は返事がむつかしいです。しかし、痰が伴う咳かそうでないかは、病気の部位が異なりますので非常に重要な要素です。わからない時はスマホに夜間の咳を録音して、病院で聞いてもらうのも1つの方法です。