今回は、小児科診療 Up-to-DATE から“ワクチン忌避に対する細やかな対応”
を掲載させていただきます。執筆は国立成育医療研究センター感染科医長庄司健介先生によります。
ワクチン忌避とは何か
ワクチン忌避は、英語でvaccine hesitancy (ワクチンヘジテンシー)といい、“ワクチンが利用可能な状況にあるにも関わらず、ワクチンに対する受け入れの遅れや、拒否を認める場合”と定義されています。
ワクチン忌避は、接種を受けない(または受けられない)子どもが、ワクチンで防ぐことができる病気(vaccine preventive disease: VPD)に罹患してしまう危険性が高まるという個人の問題に加えて、予防接種率が低下することで、現在、大きな流行がないVPDが増加しうるという公衆衛生上の大きな問題につながる可能性があります。例えば、アメリカでは麻疹、風疹、ムンプスに対するMMRワクチンの接種率が5%低下したことに伴い、2~11歳の麻疹患者数が3倍に増加したと報告されています。WHOは2019年、世界の国際保健上の10大脅威として、大気汚染や気候変動などの問題とともにワクチン忌避を上げていることからも、ワクチン忌避がいかに重大な問題と認識されているかがわかります。
なぜ、ワクチン忌避がおこるのか
ワクチン忌避は最近生じた問題ではなく、古くは英国のジェンナーが種痘を開発した時代からあったとされています。ワクチン忌避に至る理由はさまざまなものがあり、もっとも一般的なものはワクチンの安全性に対する懸念です。他にも、ワクチンの効果や必要性に対する疑問、現代医療に対する不信感、実際に罹患する方がより自然であるという信念など、さまざまな理由があります。
このように、“ワクチン忌避に至るにはさまざまな理由がある”ということを理解することは、非常に重要です。なぜなら、理由がさまざまである以上、それに対する対応は画一的なものではうまくいかないことが予想され、個別に細やかな対応をする必要があることが明らかだからです。
ワクチン忌避の頻度
ワクチン忌避の頻度については、いくつかの報告があります。例えば、米国で行われた6~23歳の子供を持つ保護者に対する電話調査では、おおよそ3%の保護者がすべてのワクチンを拒否しているという結果でした。
他にも、米国ワシントン州での調査では、2013~2015年にかけて、子どもが生まれた時点では9.7%の保護者がワクチン忌避であったという報告もあります。
また、欧州では、約20%の保護者がワクチンに対して何らかの疑問を呈していたとの報告もあります。このように、調査の時や、地域によってワクチン忌避の頻度はさまざまでありますが、おおむね数パーセント程度の保護者がワクチン忌避、またはその傾向があると考えられ、決して稀な問題ではないことがわかります。
本邦におけるワクチン忌避の頻度は明らかではありませんが、我々が実施した調査では、小児救急外来を受診した6歳未満の患者さんのうち、0.16%でワクチン忌避があったという結果でした。諸外国の調査に比べれば少ないとはいえ、やはり本邦でも一定数のワクチン忌避が存在することは明らかと思われます。
ワクチン忌避への対応
まず、いかにワクチン忌避を発見するかということですが、これにはさまざまな方法が考がえられます。当センターでは、救急外来を受診したり入院したりする際には、できる限り予防接種歴を確認するシステムになっています。これ以外にも、クリニックの一般外来や健診時、教育や保育関連施設への入園・入学時など、予防接種歴をチェックする機会は多々あると思われます。重要なことは、ワクチン忌避が発見された場合、地域として対応するための場をいかにして提供するかだと考えられます。
詳しくは後述しますが、ワクチン忌避傾向のある保護者に対して説明を行う場合、質疑応答まで含めると30分~1時間、ときにはそれ以上の時間を要することもあります。これを普段の救急外来や一般外来で実施することは困難なので、ワクチン忌避に対するための専用の外来など、ゆっくりと話ができる環境を整えておくことが何より重要であると考えられます。当センターでは、救急外来、入院患者などで、ワクチン忌避が発見された場合は、専用の予防接種外来に紹介して、そこで説明することにしています。
次回後半を掲載します。
同様の事がコロナワクチンでも起きています。アメリカでワクチン接種すると、サービスで何かが貰えるようなシステムになった時がありましたが、10~20%の人はワクチン接種を拒否しているようです。